徹夜で原稿を書いて、書き終わったのが2時半。少し仮眠をとって4時過ぎに家を出る。まちはまだ暗く、街灯がまちを照らす。ゆっくりと三崎坂を下っていせ辰の角を左に折れる。藍染大通りを通って不忍通りを渡ると根津神社に到着。
暗がりの中にそびえる鳥居をくぐると、そこに懐中電灯を振り回す怪しい人影が二人。
「よく起きれましたね」
「むしろぜんぜん寝てないんですよ」
「ぼくらもです」
ひそひそ声でそんな会話を交わしてから、写真を見せてもらう。その写真がよい。空が本当に多彩な色を見せる。毎日、毎日、僕はこの景色を見逃しながら日々暮らしている。遠目にこちらを伺ってあやしみなら歩く人の気配を後ろに感じる。どきどき。
根津神社を出て、藍染大通りに戻ると、豆腐屋に灯りがついて機械の音がうなる。まちが動き出す。これも聞き逃してる音だ。
狭い路地に入り、ろうそくの灯りを目印にして、長屋の中へ。ゆっくりと二階に上がって、二人で座る。夕方の時間と違って、周囲が静寂に包まれる。ほとんど徹夜で寝たいはずなのに、眠くならずに座る。
30分くらいするとろうそくの火が消える。夕方だったらここで部屋の中が薄暗がりに沈みこんで、暗がりの明るさを知るのだけども、朝方だと逆にゆっくりと薄明かりが部屋を満たす。暖かい梅ジュースを飲んで、長屋を出る。
帰る道すがら、空を見上げると厚い雲が覆っている。なぜかその雲の表情がいつもよりもよく見える。きっと気のせいだな。
〈実行委員 I-2〉